フリーランス妊活

32歳のフリーランス妻が不妊治療をしながら思ったことをつらつらと書きます。

不妊について妊娠してから思うこと

妊娠した人はこちら側からあちら側に行くのだと思っていた。「不妊症の人」から妊婦になるのだと思っていた。

 

しかしいざ妊娠してみると依然として「不妊症の人」としてのアイデンティティの方が強い。肉体的には妊婦であり、いい加減5ヶ月も後半になり、もちろん妊婦としての精神的な変化などは経ているものの、それでもなおそうである。

 

これから無事出産できたとしても(できることを心から願っているが)、サクセスストーリーとかハッピーエンドとかそういう言葉で済ますには余りにも…不妊と流産は大きかった。

 

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夫婦6組に1組は不妊だという現代においても、6人の出産報告に対して1組の不妊カミングアウトという割合で表に出てくることはまずない。


カミングアウトが少ないからこそ世間の知識不足やそれによる偏見が減らないし、世間の知識不足や偏見が減らないからこそカミングアウトもできない。そういう悪循環の風潮が薄らぐまであと何年かかるだろう。


私自身、通院するまで人工授精と体外受精と顕微授精の違いすら理解していなかった。どれほど治療が心身に負担を与えるか、時間のやりくりや仕事との両立が難しいか、金銭的負担がどれほどあるか、そしてそれらの負担がどのように絡みついて一つの塊になって押し潰しにかかってくるか、全く知らなかった。

 

「試験管ベイビーですか?」「代理母ですか?」「私は逆に出来やすくて困るんです」「まだ若いから大丈夫」なんて悪意のない言葉で、涙も出ずに喉の奥だけぐーっと苦しくなるなんて知らなかった。想像もつかなかった。毎月規則正しく生理が来て、基礎体温も綺麗な二層で、中絶や性感染症を始め婦人科の既往もなくて、健康診断でもなーんにも引っかからないのにそんなところで引っかかってばかりなんて思いもしなかった。

 

それなのに。それなのに。

 

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不妊治療中のズタズタの心は今は生傷ではないとはいえ、剥いたら剥がれるかさぶたのような状態であるし、これからも季節の変わり目に疼く古傷のようにたとえ思い出すことが減ったとしても残り続けるのだろう。